
こんにちは!熊本の尾場瀬税理士事務所の税理士、増永照美です。
尾場瀬税理委事務所では毎月1回、税に関するセミナーを開催しています。先日のセミナーでは、「自営業だが、法人にしようか迷っている。適切なタイミングが知りたい」というお声をいただきました。
自営業をしていると、売上が順調に伸びてきたタイミングで「法人にした方が良いのかな?」と考えることがありますよね。昨年始まったインボイス制度に伴い、法人化しようか考える自営業者も少なくありません。しかし、法人化には手続きや費用がかかるため、決断に迷う方も多いでしょう。
そこで今回では、法人化を検討する際に知っておきたいタイミングやメリット、注意点についてわかりやすく解説します。
法人と自営業(個人事業主)の違い

まず、自営業(個人事業主)と法人の基本的な違いをおさらいしましょう。
事業の形態
- 自営業:個人がそのまま事業主となり、収益やリスクをすべて自分で背負います。
- 法人:法人という独立した「会社」として事業を行い、事業主(代表取締役など)は法人の運営を担当します。
税制の違い
- 自営業:所得税が累進課税方式(利益が多いほど税率が高くなる)。
- 法人:法人税が適用され、一定の税率で計算されます。利益が大きくなると法人の方が有利な場合があります。
社会保険の違い
- 自営業: 国民健康保険と国民年金に加入する。
- 法人:役員報酬を設定すると、厚生年金と健康保険に切り替わりますが、保険料が増えることも。
責任の範囲
- 自営業:借金などの負債は、事業主本人が全責任を負います。
- 法人:会社の資産と個人の資産が分離され、会社の負債は原則として会社が負います。
法人化するタイミング

法人化を考える際、以下のような状況が訪れるときが、タイミングの目安です。
売上が増えたとき
法人化を検討する最大の理由は、売上が増えて税負担が重くなってきたときです。
- 自営業の場合、課税所得が900万円以上になると税率が33%を超え、法人化した方が税率が低くなるケースが出てきます。
- 法人税は利益に対して約23%(中小法人の場合)と一定の税率なので、所得が高いほど法人化のメリットが大きくなります。
人を雇うタイミング
従業員を雇い始めると、法人化を検討する価値があります。
- 法人化することで役員報酬や給与を経費として計上でき、節税につながります。
- 社会保険加入が義務付けられるため、従業員の福利厚生の面でもメリットがあります。
事業が拡大してきたとき
複数の拠点を持つ、事業内容を多角化するなど、規模が大きくなるほど法人化するメリットが増します。
法人化のメリット

法人化にはさまざまなメリットがありますが、特に注目すべきポイントを見ていきましょう。
節税効果
法人税率が一定であることに加え、以下のような節税手法も活用できます。
- 経費計上の幅が広がる:役員報酬、家賃(自宅を事務所として利用する場合)などを経費にできるため、課税所得を抑えられます。
- 退職金の積立が可能:法人は退職金を経費として計上できます。将来的な資産形成にもつながります。
信用力の向上
法人名義の銀行口座を持つことで、融資や取引の際に信用が高まりやすくなります。また、法人登記されていることで、取引先からの信頼も向上します。
資産保護
法人化することで、事業のリスクを法人に限定できます。万が一事業が失敗した場合でも、個人の資産を守りやすくなります。
人材確保がしやすい
社会保険の整備や法人のステータスにより、優秀な人材を採用しやすくなります。福利厚生の充実は、採用や従業員の定着率向上につながります。
法人化の注意点

もちろん、法人化にはデメリットもあります。以下のポイントを確認しましょう。
設立や運営に費用がかかる
- 法人設立時に、登記費用や司法書士の報酬が必要です。しかし、合同会社なら十数万で設立が可能です。
- 法人化後も、税理士費用や決算書の作成費用など運営コストが発生します。
社会保険料が増える
法人化すると、役員や従業員の社会保険料が増える可能性があります。特に報酬額が高い場合には負担が大きくなります。
事務作業が増える
法人化すると、税務申告や各種手続きが増えます。特に法人税や消費税の申告は専門知識が必要になることも多いので、税理士に依頼するケースが一般的です。
まとめ

自営業から法人化するかどうかは、事業規模や売上、将来のビジョンによって異なります。売上が増え、税負担が大きくなってきたタイミングや、事業の信用力を高めたい場合に法人化を検討すると良いでしょう。
今回紹介したメリットとデメリットをしっかり比較し、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、より良い選択ができます。法人化を検討している方は、この記事を参考に、次の一歩を踏み出してみてください。






